乳頭からの分泌
乳頭には小さな穴が開いていて、乳管を通して乳腺とつながっています。乳頭分泌とはこの穴から出てくる分泌のことです。乳頭分泌の原因には、ホルモンの刺激、乳管・乳腺の炎症、そして乳管内の良性もしくは悪性のしこりがあります。
分泌物が母乳のような白色だったり、黄色味がかった透明の時は、多くの場合問題ではありません。また乳頭に開口している乳管の数は4-15本と言われていますが、数箇所の穴から出てくる分泌もほとんどは心配はありません。
注意すべき乳頭分泌は、血液が混じったような分泌や1腺管のみからの分泌です。この場合、その乳管内にできたしこりが原因である場合があり、精査が必要となります。
乳頭分泌をきたす疾患
乳管内乳頭腫
乳管の中にできる良性のしこりです。乳頭の1カ所からの血性の分泌物が出たり、しこりを触れることもあります。多くの場合痛みは伴いません。
乳腺内乳頭腫について乳腺症
乳腺に起こる様々な良性の変化を乳腺症といいます。痛みや張り、乳頭分泌など、さまざまな症状が現れますが、特に心配はありません。
乳腺症について乳腺炎
乳腺や乳管の炎症によって乳頭から出血することがあります。乳房の赤みや熱感、痛みを伴うことがあります。
乳腺炎について乳がん
乳頭からの血性分泌が乳がんの初期症状であることもあります。他の症状がない場合でも、乳頭からの出血が見られたら専門医の診察が必要です。
乳がんについて乳頭の外傷
乳頭が衣服に擦れたり、粗いタオルで強く拭いたりすることで外傷を受け、出血することがあります。
乳頭湿疹や皮膚疾患
乳頭や乳輪に湿疹や皮膚疾患がある場合、かゆみや炎症によって掻いてしまうと、出血に至ることがあります。特に乳頭周囲の皮膚は非常にデリケートなため、少しの刺激で出血しやすいです。
※バジェット病とは、乳房の乳頭や乳輪に発生する比較的まれながんの一種です。主な症状としては、乳頭や乳輪の皮膚がただれたり、赤くなったり、かゆみを伴うことがあります。また、乳頭からの分泌物や乳頭の陥没が見られることもあります。
胸のくぼみ(へこみ)、ひきつれ
胸のくぼみ(へこみ)やひきつれは、多くの場合、病気ではなく体の変化によるものです。例えば、姿勢の変化や体重の増減、皮膚の自然な老化によって生じることがあります。また、緊張やストレスが原因で筋肉が引き締まり、一時的にひきつれを感じることもあります。しかし、これらの症状が長期間続く場合や、他の症状と併発する場合は、体の内部で何らかの変化が起きている可能性があります。そのため、安心のためにも、専門医に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
鏡を見たときに、何もしなくても乳房の皮膚に窪みができていたり、また、腕をあげたり軽くつまんだ時に皮膚が凹んだりする事があります。
胸のくぼみ・ひきつれをきたす疾患
乳がん
乳がんが皮膚の近くにできると、がんが皮膚を引っ張って引き連れが起こります。そこからさらに周囲の組織を巻き込むと皮膚に窪み(凹み)ができます。
乳房の皮膚を軽くつまんだ時にえくぼのように皮膚が凹んだり、何もしなくてもくぼみができている時は、乳腺外科を受診してください。
モンドール病
モンドール病は、皮膚の浅い部分の血管が詰まって炎症を起こす疾患(血栓性静脈炎)です。乳房の皮膚に起こると、細長い索状のしこりが触れたり、くぼみやひきつれを伴うことがあります。モンドール病は自然に治癒することが多く、特別な治療を必要としない場合がほとんどですが、痛みや不快感を感じる場合には、鎮痛薬が処方されることもあります。