高濃度乳腺(乳房)とは
乳房は乳腺組織と脂肪組織で構成されており、マンモグラフィでは、乳腺組織が白く、脂肪組織が黒く映ります。そして、乳房の中で乳腺組織が占める割合のことを「乳腺濃度」と言います。この「乳腺濃度」という用語は、マンモグラフィにおいてのみ用いられ、触診や超音波検査では使用されません。
画像上で白い部分が多ければ乳腺濃度が高い、黒い部分が多ければ乳腺濃度が低いと表現されます。乳腺の濃度は年齢や人種、妊娠・授乳の有無によって変化します。特に日本人女性は欧米人と比較して、若い方は高齢者に比べて乳腺濃度が高い傾向にあります。
マンモグラフィはとても効果的で大切な検査ですが、マンモグラフィでは病変も乳腺組織と同様に白く映るため、高濃度乳腺の場合、病変を見つけにくくなることがあります。
乳房の組成は、乳腺組織と脂肪組織の比率に基づいて4つに分けられます。
脂肪性
乳房が主に脂肪組織から構成されているため、マンモグラフィでの画像上では乳房が大部分黒く表示されます。
乳腺散在
乳腺組織が脂肪組織の間に点在しており、マンモグラフィでは黒と白の部分が混在していますが、主に黒い部分が目立ちます。
不均一高濃度
脂肪組織が乳腺組織の中に散在している状態で、マンモグラフィ上では黒と白の部分が混在しながらも、白い部分がより多く見られます。
極めて高濃度
乳房がほとんど乳腺組織で構成されているため、マンモグラフィでの画像は乳房全体がほとんど白く表示されます。
日本人女性は20代、30代の方だけでなく、40歳以上の方も「高濃度乳腺(デンスブレスト)」と言って、乳腺の密度が高く、しこりを見つけにくい事がよくあります。
エコー検査は、乳腺の濃度に影響されにくく、現在日本人女性を対象とした研究で、エコー検査の併用により、乳がんがより早期に発見される事が報告されています。
乳がんの早期発見・早期治療のために、エコー検査も一緒に受けられることをお勧めします。
高濃度乳腺では病変の検出が難しい場合があります
マンモグラフィにおいて、乳腺組織は白く表示されますが、病変も同様に白く映るため、特に不均一高濃度や極めて高濃度の乳腺(デンスブレストに分類される方)では、病変が乳腺組織に隠れてしまい、乳がんの発見が難しくなります。これにより、実際には乳がんであるにもかかわらず、検査結果が「陰性」と判断される「偽陰性」のリスクが高まります。
高濃度乳腺での見落としリスクを低減するために
高濃度乳腺では、マンモグラフィと乳腺エコー検査を組み合わせることで、検出可能な病変の範囲を広げ、早期発見の精度を向上させることができます。マンモグラフィと異なり、乳腺エコー検査は体への負担が少なく、妊娠中や授乳中、豊胸術後の方も安心して受けられます。
マンモグラフィと超音波(エコー)検査の相違点
マンモグラフィは、エコー検査では検出しにくい微細な石灰化などを特定するのに優れており、これらは乳がんの超早期発見に繋がる重要な所見となります。一方で、エコー検査は、マンモグラフィでは見つけにくい影やしこりの検出に有効であり、乳房を圧迫することなく、病変の形状を詳細に観察することが可能です。
高濃度乳腺自体は病気ではありません
高濃度乳房は個人の体質の一つであり、病気を意味するものではありません。人種や年齢による違いがあり、特に日本人や若年層に高濃度乳腺が多いことが知られています。
40歳以上の日本人女性の約40%が高濃度乳腺であるとされていますが、これ自体は病気ではないため、乳がん検診で高濃度乳房と診断されても、直ちに精密検査が必要というわけではありません。検査を希望する場合は、自費での検査となりますので、お気軽にご相談ください。