胸のしこり
胸にできるしこりには、良性と悪性の両方が存在し、触っただけではその違いが分からない場合がほとんどです。胸のしこりの原因は乳がんだけではありませんが、大丈夫だろうと放置したりせず、まずは検査を受けてください。診断の際はマンモグラフィや、超音波検査を行い、必要に応じて細胞診や針生検による病理検査を追加します。
胸のしこり、乳房の張れ・痛み、脇の下の腫れ・しこりなどの症状を触れて認識した場合はなるべく早く検査を受けるようにしましょう。
押すと痛いしこり
しこりを押して痛い時は、良性・悪性どちらの可能性もありますが、多くの場合は乳腺炎や乳腺症などが考えられます。
乳腺炎の場合、乳房内に炎症を起こしているため、痛みを伴うしこり以外に、熱感や皮膚の赤み等の症状を伴うことが多く、抗生剤等での治療が必要な場合があります。 一方で乳腺症は女性ホルモンの影響により生じる痛みである為、基本的には治療の必要はなく、経過観察となります。
乳がんのしこりは痛みを感じることはまれですので、しこりに痛みを感じても心配しすぎる必要はありませんが、痛みの有無だけでは乳がんの可能性は否定できない為、しこりを触れる時はぜひ乳腺外科を受診されてください。
胸のしこりの原因、考えられる疾患
乳がん
乳がんの場合、一般的に触れるしこりは硬く、がんが周囲の組織と癒着するため、乳房の中であまり動かないという特徴があります。ほとんどの乳がんのしこりに痛みはありません。
乳がんについて乳腺炎/乳腺膿瘍
乳腺炎では、炎症を起こした部分が硬くなり、しこりのように触れることがあります。ただし乳腺炎の場合乳房の痛みや皮膚の発赤、熱感などの症状を伴います。乳腺炎は抗生剤での治療が必要であり、さらに悪化して膿がたまると (乳腺膿瘍)、外科的に切開排膿が必要になる場合もあるため、早めに受診してください。
乳腺炎/乳腺膿瘍について乳腺線維腺腫
若い女性によく見られる良性のしこりです。大きさは様々ですが、多くが楕円形のつるんとした形をしていて、よく動く弾力性のあるしこりです。
乳腺線維腺腫について葉状腫瘍
しこりの特徴は線維腺腫によく似ていますが、線維腺腫より比較的大きいサイズで見つかることが多いです。
乳管内乳頭腫
乳管内にできる良性の腫瘍で、乳頭からの分泌を伴うことが多いです。血が混じる乳頭分泌の一般的な原因として知られています。
乳管内乳頭腫について乳腺症
乳腺症の場合、乳腺の表面のでこぼこをしこりと触れることがあります。乳腺症はほとんどの場合、乳がんとは無関係の良性の状態です。しかし、画像上乳がんと区別することが難しい場合は、組織を採取して検査を行い、がんの有無を確認します。
乳腺症について乳腺のう胞
のう胞は乳腺の分泌物が貯留したもので、柔らかいしこりとして触れることがあります。良性であり、過度に心配する必要はありません。
乳腺のう胞について胸のしこりに関するよくある質問(Q&A)
胸のしこりは良性と悪性の見分け方はありますか?
外見や触っただけでは良性と悪性の確実な区別は難しいです。マンモグラフィやエコー検査、必要に応じて生検などの詳細な検査が必要になります。
胸のしこりが硬いのは乳がんですか?
硬いしこりが必ずしも乳がんを意味するわけではありませんが、乳がんの可能性は否定できないため、乳腺クリニックを受診してください。
乳がんのしこりはどの辺にできますか?
乳がんのしこりは乳房のどの部分にも現れる可能性がありますが、特に外側上部にできることが多いとされています。
脇の下のしこり、腫れ
わきの下(腋窩)にはリンパ節が集まっており、リンパ節が腫れると、脇の下にしこりとして感じることがあります。
腋窩リンパ節が腫れる原因は、細菌やウイルス感染症、ワクチン接種後の反応、乳がんのリンパ節転移などがあります。
脇の下のしこり・腫れの原因
反応性リンパ節腫大
細菌やウイルス感染による身体の炎症に反応して、わきのリンパ節が腫れることがあります。またワクチン接種後の副反応で腫れることもあります。これは「反応性リンパ節腫大」と呼ばれ、痛みや不快感を感じることがあります。
乳がん腋窩リンパ節転移
乳がんが腋窩リンパ節に転移すると、わきの下にしこりを触れることがあります。転移したリンパ節は反応性リンパ節と違い、痛みを伴わないことがほとんどです。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、リンパ節に発生するがんで、わきに硬いしこりを触れることがありますが、痛みはともないません。リンパ節のしこりの他に発熱や体重減少などの全身症状を伴うことがあります。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤は皮下にできる袋状の組織に、皮脂や角質が詰まってできます。脇の下にも発生することがあり、感染すると痛みや赤み、腫れを伴うことがあります。粉瘤はがんとは関係ありませんが、炎症を起こすと腫れて大きくなり、治療が必要になります。
副乳
副乳は、乳房の発達する過程で、乳房以外の場所にも乳腺組織が残っている現象です。脇の下に副乳がある場合、腫れや痛みを感じることがあります。月経周期によって症状が変わることもあり、場合によっては外科的な治療が必要になることもあります。